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弁護士コラム Column

交通事故と企業損害

2011年10月05日
新瑞橋事務所 弁護士 森田 祥玄

Q 従業員が交通事故に遭って、会社の売上げが減少しました。
会社は交通事故の加害者に損害賠償請求できますか?
今日は交通事故と企業法務の双方に必要な知識をブログ記事にします。
以前、民法を学び始めて間もない大学院の学生に、上記Qを含む問題を解いて貰いました。
判例の考え方を勉強していた学生以外の多くは、この部分については、
「損害賠償請求が可能である」
と回答しました。
しかし、残念ながら判例は、直接の交通事故被害者以外の主体(企業)から請求をした場合、簡単には請求は認めません。
1 法人とはいえほぼ個人で営業しているような会社で
2 代替性がなく、
3 当該交通事故被害者と会社が、経済的一体関係を有する場合に、
初めて交通事故と会社の損害との間の相当因果関係を認めるものといわれています。
ですので、「数人の会社」の「代表取締役」が交通事故に遭ったような場合には、会社の損害賠償請求が認められる余地はあります。
しかし、「ある程度の規模を有する会社」の「従業員」が怪我をしたような場合、原則として会社の損害賠償請求は認められません。
私は学生に対して、
「しっかり最高裁の考えを勉強するように」
と言ったのですが、逆に学生から、
「最高裁の考え方は限定しすぎではないか?」
という問題提起を受けました。
「判例はこうだ!」と結論だけ覚えがちな実務家(というか私)の頭に、「判例がおかしい!」と疑問提起をする学生はとても新鮮ですし、説得的であったりします。
確かに、企業の損害(間接損害、企業損害などといいます)に対する裁判所の考えは、狭すぎるとも思うんですよね。
無制限に損害賠償請求されるのを防ぐという相当因果関係論も分かるのですが、あまりに厳しすぎるように見えます。
ただ気をつけなければいけないのは、
「取締役が交通事故に遭い休業したが会社が報酬を支払い続けた場合」
には、
会社からの加害者に対する報酬分支払請求については相当因果関係を認める傾向にあります。
取締役でなくて、従業員の場合はどうでしょうか。
既に支払い義務が確定しているもの、客観的に明確なもので、従業員の仕事に非代替性があれば、実際に請求を受けて明確に確定している損害なら、請求する余地はあります。
例えば大阪地裁平成16年8月31日判決は、
送迎業務にあたっている従業員が追突事故によって受傷し、自動車の運転ができなくなった事件なのですが、
会社が代行運転者の派遣を依頼した場合に、
代行運転派遣費用を会社の損害として認めています。
従業員のための損害であっても、直ちに諦めるべきではありません。
他方、名古屋地裁平成16年7月9日判決では、
調理師が交通事故にあった際に、店舗閉鎖損害と交通事故との相当因果関係を否定しています。
この調理師はすごく専門的な調理を行うので、この調理師がいなければ店舗を閉じざるを得ないという事情があったようですが、店舗を閉鎖したことによる損害については、損害賠償を認めませんでした。
名古屋地裁の裁判例の事案をみると、ちょっと限定しすぎではないか?という気持ちになりますが、従業員の怪我による『会社の逸失利益』については、裁判所は相当厳格な立場を取りますね。
企業の損害も、訴訟にならずに示談段階ならば、もう少し柔軟な解決もあり得るかもしれません。
いずれにしろ、微妙な判断と妥協が必要になる論点ですので、一度弁護士にご相談下さい。

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