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弁護士コラム Column

「特別寄与料」

2020年02月03日
名古屋丸の内本部事務所 弁護士 檀浦 康仁

1 はじめに

 2018年(平成30年),相続に関するルールに大きな変更がありました(相続法改正)。

 相続法改正については,このブログでも,これまでに何回か取り上げてきました。

 相続法改正の中には,まだ施行されていないものもあり,例えば,以前のブログで紹介させていただいた「配偶者居住権」の制度については,間もなく2020年(令和2年)4月に施行されることとなっています。

 これに対し,今回お知らせする「特別寄与料」の制度は,2019年(令和元年)7月から既に施行されている制度ですが,実務に与える影響の大きい制度です。

 

2 「特別寄与料」ってどんな制度?

 「特別寄与料」というのは,亡くなった人について,相続人ではない親族が,無償で,例えば介護をしてあげるというような労務の提供をしてあげて,それによって,亡くなった人の財産が増えたり,減らずに済んだというときに,その親族が,相続人に対して,財産の増加または減少防止への寄与に応じた金銭の支払いを請求できる,という制度です。

 

3 2019年(令和元年)6月以前のルールとその限界

 なぜ,このような制度ができたのでしょうか。

 これまでの制度にはどのような問題があったのでしょうか。

 そのことを理解するために,次のような相談事例を考えてみたいと思います。

 

【相談事例】

 私は,Ⅹの妻でした。

 Xは10年前に55歳の若さで亡くなってしまいました。

 私は,夫Xをとても愛していましたが,残念ながら,Xとの間に子供に恵まれませんでした。

 Xの父は,私たちが結婚して5年後に亡くなっており,私とXは,ⅩがXの母Zを一人にしたくないと言ったこともあり,3人で同居して暮らしていました。

 Xがなくなった時も,既に83歳の高齢者であるZが,一人暮らしになってしまうのはかわいそうだと思い,私は,Zと2人で暮らしてきました。

 Zは,Xが亡くなったことでショックが大きかったのか,Xが亡くなった1年後には脳梗塞を発症してしまい,介護が必要な状態になってしまいました。

 私は,勤めていた仕事も辞めて,時間の融通の利く仕事に転職して,Zを介護して生活していました。

 Zはその後9年生き,昨年,92歳で亡くなりました。

 Zの相続人は,Xの弟のY1人だけです。

 Yは,遠方に住んでいて,YもYの奥さんも,全くZの世話をしたこともありません。

 それなのに,Yは,Zの相続人は自分だけだとして,すべての財産を手放して,私が,Zと一緒に住んでいた家を出ていくよう,私に求めています。

 こんなことはあんまりだと思うのですが,どうにかならないのでしょうか。

 

 この気の毒な事例について,今までのルールでは手の打ちようがなかったのです。

 

 すなわち,今までのルールでは,相続人が,労務を提供するなどして,亡くなった人の財産を増加させたり,減少しないようにしたというような場合には,「寄与分」という制度により,その「相続人」が,その分通常の法定相続分よりも余分に相続することが認められていました。

 つまり,「相続人」が労務の提供等をすることが要件となっていたわけです。

 もっとも,今までのルールの中でも,本件のXのような相続人が存命である場合には,裁判例は,本件の相談者のような立場の人をXの履行補助者として寄与分の成立を認めて衡平を図っていました。

 しかし,本件のような「相続人」不在のケースでは,いかんともすることができなかったのです。

 

4 「特別寄与料」制度

 これに対して,新しい制度の下では,相続人でない親族が保護されることとなったのです。

 新しいルールの下では,相談者は,Zに対して特別寄与料を請求することが可能になります。

 このように,「特別寄与料」の制度は,とても意義のある制度です。

 ただ,本件では,Zが脳梗塞になってしまったために,難しかった可能性もありますが,本来は,本件のような事案では,遺言書を作成しておくとよかったということもあります。

 相続の問題には,いろいろと難しい問題が含まれていることもありますので,相続事例でお悩みの場合には,ぜひ弁護士にご相談ください。

 名古屋丸の内本部事務所 弁護士 檀浦康仁  

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