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弁護士コラム Column

新型コロナウイルスと面会交流

2022年11月16日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 岩田 雅男

※このコラムは,令和4年11月16日に執筆しております。執筆時点以降の事情変更により,記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。引用しているウェブサイトについても同様にご注意ください。

弁護士法人愛知総合法律事務所,丸の内本部事務所所属の岩田雅男です。 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから約2年が経過しています。とりわけ,愛知県や名古屋市は,全国的に見ても,感染者数が多く,いろいろな活動を自粛せざるを得ない状況が続いております。

​​新型コロナウイルスは,人々のライフスタイルだけではなく,法律上の問題にも日々大きな影響を与えています。  

今回は,そのうち,新型コロナウイルス下における面会交流を取り上げます。

コロナウイルスを理由に子どもの面会交流を拒否?

よく依頼者の方から「新型コロナウイルスが蔓延していますが,感染が不安です。直接の面会交流を実施しなければならないでしょうか」,「面会交流を拒否できないでしょうか」,「新型コロナウイルスを理由に面会に応じてくれません。何か方法はないでしょうか」というご相談をいただくことが多いです。

当初は,新型コロナウイルスを理由として直接面会交流を拒否することが可能かどうかについては,新たな感染症ということもあり。なかなか法的な結論が出ない状態が続いていました。

​​もっとも,この約2年の経過で,私自身も複数の事件を担当し,少しずつ裁判例等も現れてくるようになりました。ある程度方向性が定まってきたので,これらの流れを踏まえて,注意点をお伝えいたします。

コロナ禍での代替的な面会交流の方法

1.代替的な面会交流方法の検討 

新型コロナウイルスと面会交流の問題については,法務省が見解を発表しています。 

法務省によれば,

​「面会交流は,子どもの健やかな成長のために重要なものですが,新型コロナウイルス感染症の拡大が問題となっている現在の状況の下では,従前取り決められた方法で面会交流を実施すると,子どもの安全を確保することが困難になる場合も生じ得るものと考えられます。 したがって,そのような場合には,面会交流の方法を変更すること等を検討していただく必要があるものと考えられますが,父母間で話合いをすることができる場合には,子どもの安全の確保に最大限配慮し,どのような方法で面会交流を実施するのが相当かについて話し合ってください。」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00033.html ​​


​​ とされています。  

その上で,代替的な交流の方法として,ビデオ通話,電話,メールなどが紹介されています。

​​ 特にビデオ通話については,「面会交流を実施してほしい親」のご要望と「コロナウイルスが不安で面会交流に消極的な親」のご要望を満たす中間的な案として,現在実施されていることが多い方法です。 

​​ 是非双方にてご検討いただきたい方法です。  

その際,ビデオ通話によることのみを決めるのではなく,そこでどんな遊びをするか,どんな話をするかまで決められると充実した面会交流を実施することができるでしょう。

2. どのような場合に代替的な面会交流が認められるか

それでは,どのような場合に代替的な面会交流を行うことになるのでしょうか。 これまでの私の経験上や裁判例に照らすと,裁判所は,新型インフルエンザ等対策特別措置法上の「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の対象区域となっている場合には,代替的な面会交流に切り替えることも許されるという判断を下すことが多いようです。

​​ そのほか,各地方自治体は,独自の警戒宣言等を発令することもありますが,この場合には,裁判所としては,なお直接面会交流をすべきと判断がなされることが多く,やはり「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」の有無がポイントになっているようです。

この点に関連して,参考になる裁判例としては,大阪高裁令和3年8月2日決定(判タ1499号95頁)が挙げられます。

このケースは,事前に調停で直接面会交流を行うことを約束していたにもかかわらず,直接の面会交流が実施されなかったことから,面会交流の不履行1回につき10万円の支払いを求めた事案です。

結論として,大阪高裁は「支払いはしなくてもよい」という判断をしました。

面会交流の調停で約束をした場合には,その約束には判決と同様の効力があります。さらに,面会の条件について,日時・引渡場所等を具体的に定めた場合には,面会交流の不履行1回につき金銭の支払わらなければならないという形で,間接的に強制をすることができます(「間接強制」といいます)。

もっとも,たとえ具体的に内容が定まっていたとしても,諸々の事情で,直接面会交流が実施できない理由が合理的であり,かえって直接面会交流を行うことが,お子さんにとって過酷になってしまう場合には,間接強制を行うことは過酷な執行として認められません。

このケースでも,面会交流が実施できなかったのは,

​①配偶者自体が新型コロナウイルスにかかってしまっていたこと,
​②当時,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が講じられていたこと
​③代わりにビデオ面会を行っていたこと


​​等の事情を評価し,金銭の支払いの命令は過酷な執行であると判断がなされました。

​​ このケースでは,調停の時点で,新型コロナウイルスへの懸念を踏まえた調停の約束が定められていたことも考慮されており,事前の調停でどのように取り決めるのかも非常に重要になっていることがうかがえます。

3.信頼関係の構築に努めることが重要 

面会交流を実施しなければならないのは,何らかの原因で夫婦が別居に至ってしまっているご家庭です。

​​面会交流以外にも紛争が生じており,双方に言い分があることが多いです。

​​ そこで,例えば新型コロナウイルスを理由に面会交流の条件について話し合おうとすると,その他の問題についても話し合いが波及してしまい,より関係が破綻してしまう可能性があります。​​ それぞれの問題について誠実に話し合いを行い,新型コロナウイルスの問題を各ご家庭において,真摯に受け止める必要があります。

当事者同士での話し合いで解決しない場合には,弁護士にご相談を 

とはいえ,対立状況が深刻だと当事者同士での話し合いが困難になることもあります。当事者同士での話し合いで解決しない場合には,是非弁護士にご相談ください。 面会交流以外の問題も含め,それぞれの問題を整理した上で,適切な解決に向けて,アドバイスをすることができます。​

​​ 弁護士法人愛知総合法律事務所では,ご夫婦関係の問題について,毎年数多くのご相談をいただいております。 必然的に新型コロナウイルス下でのご相談にも数多く対応しておりますので,是非お気軽にご相談ください。

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​​ 弁護士法人愛知総合法律事務所 名古屋丸の内本部事務所 弁護士 岩田雅男

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